Koboshiは、複数の言語を学んだり、日常的に使ったりする人のための単語アプリです。単語を一度調べると複数の言語で意味を確認でき、忘れかけた絶妙なタイミングで復習を促します(間隔反復と呼ばれる仕組みで、FSRSという本格的なスケジューリングを使っています)。
Koboshiの名前の由来は、何度倒れても起き上がる「起き上がり小法師」と、拾ったはずのものがこぼれ落ちる「取りこぼし」。脳内から消えていった単語を図太く拾い上げる、という意味を込めています。Gaijinさんが好きそうなネーミングに落ち着きました。
この記事で話したいのは「なぜ作ったのか」。かなり個人的な話になります。
どの言語でしっくりするかは分からない
言葉の意味が腑に落ちる「あ、そういうニュアンスか」という瞬間は、母国語以外でも感じることはありますよね。
私が英語やスペイン語の単語を調べるとき、日本語の意味を見てピンと来る時もあれば、英語が一発で刺さる時もあります。ウルドゥー語が決め手になることもしばしば。どの意味が一番腑に落ちて、覚えやすいかは正直人にもよるし、特定の言葉にもよる。
Koboshiは自分が選択した言語すべてで言葉の意味を確認できます。また新しい言語を勉強している間に、比較的弱い言語の語彙も同時に振り返れます。研究でも子どもの頃の環境で触れていた言語は頭の中で眠っているだけで、想起(Retrieval)することで効率よく鍛えられます。
ヘリテージスピーカーとしての、個人的な話
私は中高とパキスタン育ちで、ウルドゥー語はほぼネイティブとして話します。リズムも、アクセントも、冗談も。ただ語彙だけは正直に言うとA2、よくてB1です。日常会話は問題ないのに、使える単語が少ない。
ウルドゥー語はヒンディー語と話し言葉はほぼ同じで、日常的に英語の単語を混ぜて話します。印パはイギリス領である時期が長かったため、英語ができる人が非常に多いです。難しい語彙を知らなくても、何不自由なく普通に暮らせるんです。周りの人たちも傾向は同じで、私より単語のレパートリーが少し多い程度でした。
ネイティブに聞こえるのに、単語が足りない。そんな言語を継承語、そして継承語を話す人をヘリテージスピーカーといいます。Koboshiは継承語も設計の対象にしています。詳しくは継承語の専用ページへ。
誰のためのアプリか
すでに2つ以上の言語を使っていて、そこにもう1つ増やしたい人。これがKoboshiのターゲットユーザーです。新しい言語は間隔反復でしっかり覚えて、持っている言語はついでに鍛える。
そのひとつが継承語なら、効果はなおさらです。半年後、海外の親戚や友達を驚かせてやりましょう。Koboshiを始める
継承語がなくても使い方は同じです。初めての外国語でも、学習エンジン兼、辞書として使ってください。
ど忘れするChatGPT
Koboshiを作る前は、ChatGPTのプロジェクトを単語帳代わりにしていました。出会った新しい単語を、そのままチャットに記録していくやり方です。単語の多くはDuolingoから来ていました。Duolingoはレッスンで出てきた単語を記録してくれますが、リスニング問題の新出単語は記録に残りません。私はそれも保存したかった。
チャットにどんどん追加していくやり方は2〜3ヶ月でチャットが一杯になり、安定性が皆無です。チャットには記憶の上限(コンテキストウィンドウ)があって、超えた分は古い内容から静かに消えていきます。保存したはずの単語が、いつの間にか無い。仕方なく次のチャットを作って、途中から積み直しです。
ChatGPTで現在はスプレッドシートへの書き出しが出来るようになりましたが、2026年にスプレッドシートで単語を覚える人はいないでしょう。欲しかったのは保存場所だけではなく、調べたその場で記録されて、復習はスケジュールが勝手に進めてくれる仕組みでした。
私はデベロッパーではありませんが、AI時代のお恵みと、面倒を減らしたい性分がKoboshiをプロダクトにさせました。そこそこニッチなニーズですので、会社がわざわざ開発するインセンティブも少なかったと思います。一人で作ったからこそスリムに運営できて維持できる(と願っています)。
これから
Koboshiはまだ若いアプリですが、毎週確実に改良しています。ここまでの話に心当たりがあったら、今日出会った単語で試してみてください。